
2024年公開講座 夏の合宿の様子
今年も写真好学研究所公開講座2025夏の合宿「現代写真講座」を2025年8月9日〜11日、3日間の連続講座として開催致します。講座担当講師は映像配信「流れる会話」を写真好学研究所の所長と行っている中澤賢(PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA)さんに昨年に引き続きお願いしました。中澤さんは2025年春に所長が運営するgallery0369で写真展を開催致しました。開催中に中澤さんにお会いして話をされた方もご存知の方もみえることと思います。作品制作を進める中で「最近まわりの人たちと話をしていてもあまり面白く感じない」「テクニカルな話のリフレインに飽きてきた」「表現することについて深く知りたい、感じたい」「そもそも写真とはなんだろう」「決定的瞬間という言葉に疑念を持っているひと」「現代写真ということについて知りたい」「芸術にについて考えてみたい」そんな様々な症状?が出ている人たちに今回の夏の合宿は向いているのではないでしょうか。
誰かに褒められるためではなく、先ずは自分自身が感じていることの輪郭を確認したり、自立する為に考えてみませんか?今回の講座は座学ですので少し「負荷」をかけることもあると思いますが、知らないことやわからないことについての紐解きがはじまることは、新しい世界と触れあうきっかけとなり自分自身や世界を見つめる「基準」作りにもなるはずです。表現世界、写真と向き合いたい人は是非ご参加ください。所長と一緒に学びましょう。自分の中の「果実」を実らせるために。
以下は中澤さんからの今回の講座に向けたご案内のためのテキストです。
イントロダクション
写真が現像と印刷を伴わなくなってすでに20年以上の歳月が流れています。その進化の過程は、デジタルカメラから始まり、携帯電話にカメラが搭載され、近年のスマートフォンの画質は目を見張る物があります。
しかし、カメラがこれだけ進化を遂げているにもかかわらず、カメラ操作者の進化はいまだ「眼の前で起こった一瞬の光を繋ぎ止める行為」にとどまり続けている様に思います。偶然起こった面白いことやシリアスな局面を探すことが上手い人が、立派な芸術家になるのであるならば、時間に余裕のある人や商業写真家が一番の芸術家ということになります。しかし、そうではありません。
哲学者のヴィレイム・フルッサーは、写真を撮る行為について、以下のように論述しています。
たしかに、理論的にはひとつの写真を同じやり方かあるいはとても似たようなしかたで何度も繰り返し撮影することができますが、それは写真を撮るということにとって興味深いことではありません。そのような画像は「余計」なものです。それは新しい情報を担っていないので余分なものです。
(写真の哲学のために テクノロジーとヴィジュアルカルチャー ヴィレム・フルッサー著 深川雅文訳 p32 株式会社勁草出版 1999年)
写真は芸術です。しかし、撮影しただけでは芸術にはなりません。偶然撮影できてしまったものは、芸術ではありません。フルッサーが言うところの、新しい情報を担っていない写真は余計なものとなります。
もちろん、過去にはダダやシュルレアリスムといった無意識や偶然を扱う芸術運動がありましたし、写真も多く使われました。100年ほど前の話です。ダダやシュルには、時代に沿った明確な思想があったので私は余計なものとは思いません。
現在でも、シュルレアリスムは無くなっていません。しかし、1900年代初頭の時代性を反映した表現を、2000年代初頭に生きる我々が、時代が呼応していない思想を使い、無邪気に(計らずも無意識に)扱っている事を、当時のシュルレアリストたちは望んでいないのではないかと私は思います(シュルレアリスムの延長上で写真を撮影している人も少ないと思いますが)。
そう考えると、時代に沿った表現は先人たちに敬意を払うという事になります。時代に呼応した表現こそ、我々が目指さなければならない芸術なのではないでしょうか。
上記の理由から、本講座はいままで数多く行われてきたワークショップのスタイルである、カメラで撮る事を基本とした講座ではありません。カメラの操作は教えません。お持ちいただいた写真の評価もしません。既存のワークショップのような、プリントした写真を並べて、皆で話し合って良いところを探しだすということもしません。そして、皆さんの知らないことを教えて思想を植え付ける講座でもありません。
あくまでも、参加者が写真表現と向き合い、自分で自分の芸術写真作品を制作できるようになっていくためのキッカケ作りをお手伝いするためだけの講座です。ですので、カメラが好きな人は本講座に向いていないと思います。逆に、全くカメラを使ってこなかった方のほうが理解が進むかもしれません。
厳しいことを言いましたが、年に一度のgallery0369での夏合宿となります。昨年の合宿では時間的な制約もあったので、部分的にかいつまんでの講座でしたが、今回の講座は、3日間の連続講座となります。ですので、初心者の方にも理解が深まるような構成としています。それぞれの講座の参加は自由ですが、講座を連続して受けることで、理解が深まるように設定しています。少しでも興味のある方は、是非ご参加していただきたく思います。
PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA
中澤 賢
カリキュラム:
8月9日(土)
11:00〜12:00 自己紹介、カリキュラム説明
13:00〜14:30 芸術写真の成り立ち1
14:45〜16:15 芸術写真の成り立ち2
16:30〜18:00 現代思想入門
8月10日(日)
10:00〜12:00 現代アート入門
13:00〜14:30 現代写真入門1
14:45〜16:15 現代写真作家研究1
16:30〜18:00 現代写真作家研究2
8月11日(祝)
10:00〜12:00 現代写真入門2
13:00〜14:30 まとめ
※3日間の連続講座になります。できる限り連続講座として受講してください。
※9日夜、10日夜は中澤さんを囲んで晩ご飯を食べながらの懇親会を開催致します。(懇親会参加費用は講座参加費には含まれていません。)
※古民家Hibicoreでの宿泊プランも設定します。(宿泊費は講座参加費に含まれていません。宿泊費などについてはお問い合わせください。)
※合宿プログラムなどの詳細な内容については参加予約した方にお伝え致します。
参加予約申込:こちらのリンク先の予約ページよりお申し込みください。参加料金についても予約ページに記載してあります。参加人数お一人様ずつお申し込みをお願い致します。
持ち物:
筆記用具、
参加者は、資料をダウンロード形式にて配布を行うため、ノートPCがあると望ましい。無い方は紙の資料を配布いたします。(プリント代実費)
開催場所:
gallery 0369
〒514-2113 三重県津市美里町三郷369番地
https://gallery0369.jp/
お問い合わせ:
夏、写真好学研究所webページのお問い合わせページよりお問い合わせください。
この夏、写真芸術について学びましょう。ご参加お待ちしております。